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【生産者通信】三浦醸造所 三浦誠司様・三浦千代様

【生産者通信】三浦醸造所 三浦誠司様・三浦千代様

サラリーマンを経て、味噌づくりの家業を継ぐ道へ。伝統を受け継ぎつつ、新しいことにもチャレンジしたいと語る五代目の誠司さんと、お客様と蔵を繋ぐ妻の千代さんにお話を伺いました。

株式会社三浦醸造所

代表・五代目 三浦誠司(みうらせいじ)

通信販売担当 三浦千代(みうらちよ)

 

◼️プロフィールを教えてください。

三浦醸造所は1849年創業、今年で174年目です。

味噌、醤油、甘酒の醸造と製品の原料にもなる米糀の製造、原材料の米(全量)や大豆(一部)などの栽培を行っています。

企業理念として「日本の誇る発酵文化を大切に守り次世代へ継承していくこと、安心安全で豊かな食を提供することを使命とし、原材料を栽培する自社農場の土づくりから製品の醸造・充填までを信念と責任を持って行う」ことを掲げています。

◼️ねさし味噌とは…

“ねさし“とは、徳島の方言で「寝かせる」ことを「寝さす」というのが名前の由来。その作り方に特徴があります。

一般的な味噌の原料は、大豆・塩・麹(こうじ)です。米麹を加えた米味噌、麦麹を加えた麦味噌、大豆の麹で発酵させる豆味噌など、日本には地域によってさまざまな味噌があります。また、その製造法に起因する色のちがいによって赤味噌、白味噌・淡白味噌のようにも分類されます。

中京地方の豆味噌にルーツを持つ「ねさし味噌」は、大豆と塩だけを原料としてつくられます。独特の香りと風味を有する豆味噌。通常の味噌づくりに欠かせない種麹菌(たねこうじきん)は一切混ぜないのが三浦醸造所のこだわりです。

◼️ねさし味噌の作り方

1)大豆の浸漬

 …大豆を水に浸して充分な水分を含ませる

2)蒸し

 …こしき(大きなせいろ)で蒸す

3)すりつぶす

 …蒸しあがった大豆が冷めないうちにミンチの機械に通してすりつぶす。

4)なまこ成形

 …すりつぶした大豆をなまこ状に成型し、放冷する。(海の海鼠に形が似ているから「なまこ」と呼ぶそうです。)

5)ねさし

 …冷めたなまこを2cm程度の厚さにカットし、稲わらのむしろの上に、斜めに寝かせながら並べる。

6)自然生え

 …自然に毛カビが生えるのを待つ。寒仕込みで数週間~60日程度。これを「自然生え」という。

7)攪拌(かくはん)

 …十分に毛カビが生え、色も黒く硬くなった6を、塩・水とともに混合機に入れて撹拌する。

8)熟成

 …7を混合機から取り出し、仕込み桶に入れ3年間熟成させる。

◼️なぜ、この仕事を選んでいるのか?魅力などをお聞かせください。

五代目・三浦誠司さん(以下、五代目):

看板商品のねさし味噌と濃口醤油の醸造元として代々受け継がれてきた家業ですが、すぐに継いだわけではなく、大学を卒業後は東京でサラリーマンをしていました。長男である兄が結婚し大阪に住まいを構えたのがきっかけで帰郷を決め、実家を継ぎました。

当初は醸造業よりも農業に関心が強かったのですが、だんだんと醸造業に魅力を感じるようになり、今ではどっぷりはまっています。

千代さん:

私はお客様と触れ合えることにやりがいを感じています。出展の際にお顔を見てお話ができたりすることももちろんですが、発送した商品の中にささやかながらお手紙やレシピを添えておりまして、そうしたものを喜んでくださると私もとても嬉しく感じます。

◼️当社の自慢(食べて感じてもらいたいこと)

千代さん:

たとえば「米糀味噌」と「黒大豆糀味噌」は、違いは大豆の種類だけなのですが、味や香りは全く異なります。製法やその他の原料は全く同じなのに、素材のもつ豊かさを感じてもらえる製品です。

このように素材の個性を活かすことや、それぞれの製法を大切にすることで生まれる、味や香りの豊かさをぜひ味わっていただきたいです。

◼️プロフィールや動画を見る方へ感じてもらいたいこと

千代さん:

おいしいものとは何か、本物の味とは何か、答えは十人十色だと思います。その一つの選択肢として私たちが考えるおいしさや豊かさ、これからも繋いでいきたい価値を感じていただけるとうれしいです。

◼️これからの取り組み

五代目:

無施肥無農薬栽培の米と大豆という、栽培方法にこだわった原料を用いて「米糀」と「豆麹」を作り、完全な全糀で味噌を仕込むことです。挑戦することのほとんどは無駄なことになるのですが、そこからヒントが生まれることもあるので。

千代さん:

現在の「ひと樽オーナー制度」をさらに発展させて、原料栽培からオーナーさんと共に育てていく製品づくりに取り組んでみたいです。味噌づくりや素材の魅力に興味を持っていただくきっかけとなればと考えています。

また、醸造蔵の中の「木桶再生プロジェクト」も立ち上げる予定です。木桶づくりに取り組む若い職人さんたちと、弱ってきた古い木桶を復活させ、サスティナブルな活動を目指しています。

◼️今感じている課題

千代さん:

種子法廃止や種苗法の改正、農業人口の減少や高齢化、自然環境の変化などにより、良質な原材料の確保や伝統製法による製造がどんどん困難になってきています。また、技術を受け継いでくれる人材の確保も喫緊の課題です。

五代目:

毛カビが生える時期は、気温や湿度の変化に敏感になる作業です。昨今の温暖化が影響し、仕込みに適した期間が短くなっているのが気になります。

◼️現地に来て感じてもらいたいこと

五代目:

自然豊かな徳島の小さな醸造所です。この地の風土に培われた素材や菌が静かにゆっくりと熟成されている様や日常の取り組みを、実際に感じていただければうれしいです。

◼️イベント・アクセス方法

千代さん:

蔵見学や畑の見学も希望があれば実施していきたいと考えています。事前にご相談ください。

アクセス方法は、徳島阿波踊り空港から車で1時間、JR徳島線の最寄り駅・学(がく)駅からタクシーで9分、約5㎞ほどです。駐車場もありますのでご相談ください。

取材協力:

株式会社三浦醸造所

徳島県阿波市市場町市場字町筋468

代表・五代目杜氏 三浦誠司 氏

通信販売担当 三浦千代 氏

https://www.miura-jozo.com/

取材:小林舞依