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【FGJ公式】第2回バスツアー ~南房総の生産者から学んだ「変わりゆくこと」「伝統」~開催レポート

Published on
2022年5月17日
fgj@admin
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出発

朝の新橋は激しい雨と傘が飛ばされそうな強い風。

しかし、参加者の皆さんが定刻に集まってくださり、無事に出発できました。

今日は11時頃には雨が止み、その後晴れるから。そう願いながらの出発です。

館山ジビエセンター 害獣処分ではなく、いただいた命の活用へ

最初の訪問地、館山ジビエセンターには早めに到着。

代表の沖さんが「センター始まって以来の天候の悪さです」と、にこやかに迎えてくれました。

まずは沖さんによる館山の状況説明。

獣による農作物への被害は全国で年間158億円、千葉だけで年間3億円にのぼるそうです。千葉では10年前までは猪の被害がほとんどなかったものの、今では被害の殆どが猪によるもの。

猪の被害では、例えば農作物の新芽が出て、翌日収穫という絶妙なタイミングで農作物を食べられてしまいます。それまで時間をかけお金をかけて育てた作物が収穫前日にゼロになるわけです。

また、猪は体をあちこちにバタバタこすりつける習性があります。

そのため、猪が入った畑や田んぼの作物は猪の臭いがつき、さらにはもし作物を収穫するとコンバインを通じて他の田んぼのコメにも臭いがついてしまうため、直接被害に合わなかった作物も出荷できなくなるそうです。

90歳の男性の自家菜園の壁が復旧できないほど壊されたことも。

そのため、防護柵による農作地の保護や、罠による捕獲など対策が必要です。

さらに現在の取組として、捉えた獣を駆除するだけから一歩進める取り組みをしています。

それは、頂いた命に責任を持ち有効活用すること。まずは大切に美味しく頂くことを目指し、ジビエ肉として千葉、東京へ販売を広げています。更には骨のアートや皮製品などにも広げる準備をしています。

座学の後は解体場の見学です。

このツアーだからこそ見学できる内容に、みな興味津々です。

解体中の猪や今朝届いたハクビシンを間近で見せてもらいました。

動物の身体の構造や命を頂く事について、参加した子どもたちも怖がらずに真剣に見て考えていました。

東安房漁業協同組合 川口畜養場 海の幸の安定供給の現場を視察

ジビエセンターを出ると、雨がかなり小降りになってきました。

山の中から出て海岸線を走ると、30分ほどで到着です。

畜養場ではサザエ、伊勢海老、アワビなどが養殖されています。

畜養することで資源保護と安定供給の両方の役割が果たせるとのこと。

大きなサザエ、伊勢海老を見せてもらうたび、参加者からは歓声があがりました。

伊勢海老の飼育方法、触角を鳴らす威嚇音、雌雄の見分け方、黒アワビと赤アワビの違いなどお聞きした後、外に出てアワビの稚貝を見せて頂きました。

アワビの産卵期は11月から12月なので、今回、見せて頂いた稚貝は1〜1年半のもの。水から上げると皆急いで裏側に隠れようと動きます。

参加者からの最近の磯焼けについての質問から、地球温暖化の影響も聞きました。

皆さん時間ギリギリまで、それぞれの興味を質問していました。

なお「この場で食べたい!」とのご要望が出ましたが、残念ながら個人への販売はしていませんでした!

昼食 「うなぎ 新都(しんみやこ)」

まず突出しの枇杷と、サービスで出して頂いたクジラ(地元でとれるツチクジラ)の竜田揚げに舌鼓を打ちます。

メインは鰻重!甘さがかなり抑えられたタレは個人的に初めてでしたが、より鰻の味を楽しめて箸が進みます。参加者からも大好評。

そしてこのツアーだけの特典!

館山ジビエセンターから仕入れたイノシシを使った牡丹汁を頂きました。処理が上手だからでしょう、イノシシ肉はやわらかく、甘みたっぷりの脂が乗っていました。

大変美味しい食事を用意してくださった料理長長島さんでしたが、食事始めに挨拶を済ませると、味の感想も聞かず、急いで外出してしまいました・・・。

参加者たちはその理由を後で知る事となります。

高家神社(たかべじんじゃ) 日本で唯一料理の神様をまつる神社

主祭神 磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)(尊称:高部神(たかべのかみ))

昼食の余韻にひたりながらバスに揺られ、高家神社に到着。

神社の由来は「日本書紀」で景行天皇がおられた時代に遡ります。

天皇がその皇子、日本武尊(ヤマトタケル)の東国平定を祝って安房を訪れたときのこと。

おもてなしした磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)の料理の技を大変に評価し、皇室の食事を提供するよう命を下しました。

そして磐鹿六雁命は料理の神としてまつられる事に。

高家神社には茅葺き屋根が美しいコンパクトで形の整った拝殿があります。

そして大事に使用した包丁をそのまま捨てるのではなく、感謝を込めて供養する「包丁塚」も設置されています。

宮司様のご説明を聞いたわたしたちはそのまま、庖丁式を執り行う庖丁式奉納殿に移動しました。

四條流庖丁式 日本料理の伝統と技を見学

今回、特別にわたしたちは、奉納殿広間にて庖丁式を見せて頂きました。

庖丁式とは、平安時代に始まった、日本料理の伝統を今に伝える厳粛な儀式です。

烏帽子と直垂をまとい、庖丁とまな箸を用い、一切手を触れることなく調理します。

古くは大切なお客様のおもてなしとして、神社以外でも披露されたそうです。

流派は正統派と言われる四條流で、古式に則った儀式としての美しい所作を見られました。日本舞踊や歌舞伎の型の美に通じるものを感じます。

まな板が清められ、庖丁と魚が飾られた後にうやうやしく登場されたのが今回のメインを務める長島さん。実はわたしたちが昼食を美味しくいただいた「うなぎ 新都(しんみやこ)」のあの長島さんです!(写真中央)

披露されたのは「真菰包みの鯉」と言う切形(きりがた:儀式名)でした。

切形は鯉だけで約40種類、鯛・スズキ・真名鰹などが約10種類ずつ、鶴・雁・鴨などの鳥も数種類ずつあるようです。

見ていると、下の写真のように長島さんが体の正面で刀の刃と峰の向きをくるりと回す(返す)所作が頻繁にあります。

何だと思いますか?

これは魚の身を切るたびに感謝を込めた礼を表しているそうです。

生きるものの命に感謝し食べる、日本文化の大切な部分の表現でした。

庖丁式が終わった後は長島さんへの質問タイム。

私たちは料理を近くで見せてもらったり、式で使われた重い庖丁を持たせてもらったりして盛り上がりました。

長島さんは、正師範や準師範からの指導のもと、月に2回ほどの稽古を重ね、10年近くになるそうです。

古来の伝統を受け継ぐ大切な活動です。

近藤牧場 ストレスフリーな牛たちとの出会い

高家神社から30分くらい山中を北上した後、バスが入れない小さな急坂を皆で5分ミニハイキング。すっかり回復した天気の下、近藤牧場に到着です。

近藤牧場は現在のオーナー近藤さんのお父様が始めてから60年、現在は15頭を飼育する小規模の牧場です。

まず印象的だったのが、牛が人を怖がらないこと。

のんびり優しい目でこちらを見て、近づいて来ます。

人に傷付けられず、ストレスのない環境で育っていることが自然と伝わります。

近頃注目のアニマルウェルフェアについても、J-GAPの認定を取得した時の監査員が、「文句なし」とお墨付きをつけたそうです。

現在飼育しているのはブラウンスイス種、ガンジー種、ジャージー種の3種類。

日本の牧場に多いホルスタインはいません。

近藤さんに尋ねると、美味しい乳を出す種類だけを飼育したいとのこと。

あと2,3日で出産する牛が2頭いたのですが、近藤さんは出産を手伝わないそうです。

理由を聞くと、逆子などでない限り、「体力があるので勝手に産む」のだそうです。テレビでよく見る牛の出産を思い出し、牛の健康について考えさせられました。

近藤牧場では20年前にアイスクリーム、その後チーズをつくり始めました。当時、周りの牧場ではモッツァレラチーズの名前を聞いた事のある人さえいなかったそうです。

その後作ったスイーツが農林水産大臣賞を受賞した人気商品に。

現在も道の駅ふらりにある売店での販売のほか、チーズを広げるためにピザ店”VENTO”も営業しています。

近藤さんの長男も後を継ぐべく手伝っているとのこと、これからも幸せな牛たちから分けて頂く美味しい乳製品を世の中に提供していただければ有難いと思いました。

道の駅 富楽里とみやま 房総みやげを買い、近藤牧場を味わう

近藤牧場から15分程。道の駅ふらりへ戻ってきました。

ここは高速道路にも一般道にもつながっています。

地元の朝どれ野菜やくじらや塩辛などの海産物、加工品などが所せましと置いてあります。

現在は建物改装中のため仮説店舗での営業ですが、多くの人が訪れていました。

私たちが目指すは近藤牧場売店の乳製品!

ソフトクリームと牛乳、モッツァレラチーズ、リコッタチーズ、プリン、4種類のアイスなどが売られています。売店にはあっという間に行列ができてしまいました。今見たあの幸せそうな牛たちから分けて頂いた乳でつくっているのですから、美味しくないわけがないですよね。

みな大満足でお土産を買っていました。

道の駅ふらりは現在仮設店舗での運営ですが、近藤牧場も引き続き出店しています。美味しいソフトクリームや牛乳を味わいに、ぜひ立ち寄ってみてください。

海ほたる 夕日に見送られる房総の旅

最後の休憩は海ほたるで十分に時間を取りました。

みなお土産を見たり、食べ歩きをしたり思い思いに過ごしました。

展望デッキから西をみると、ちょうど富士山や横浜のビル影の向うへ沈む夕日に出合えました。鮮やかなオレンジ色は朝の豪雨の大変さを忘れさせる、旅の締めくくりにぴったりの心に残る風景でした。

今回は各生産者様のご紹介および昼食のご用意など、新都の長島様に多大なる尽力を頂きました。誠にありがとうございました!

また、温かくお迎えくださった訪問先の皆様、本当にありがとうございました。

追記

記録を書きながらアンケート集計をみたら、5点満点中5点をつけて下さった参加者が約8割、残りの方全ても4点を下さり、熱いコメントも多く、企画者一同、大変嬉しいです!!

次回の企画を楽しみにお待ちください!

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

房総の豊かな自然と、生産者の方々の工夫や思いがつまった料理・食品を味わってみてください。

■訪問先

<館山ジビエセンター>
https://tateyamagibiercenter.com/

<東安房漁業協同組合>
https://jf-higashiawa.or.jp/

<うなぎ 新都(しんみやこ)>
http://www.shinmiyako.jp/

<高家神社(たかべじんじゃ)>
https://takabejinja.com/

<近藤牧場>
http://www.kondo-farm.com/

<道の駅 富楽里とみやま>
https://www.furaritomiyama.jp/