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【日本酒コラム】Vol.3「寒い時期にはやっぱり熱燗!初心者でも安心“ぬる燗“の楽しみ方」京都府・向井酒造

【日本酒コラム】Vol.3「寒い時期にはやっぱり熱燗!初心者でも安心“ぬる燗“の楽しみ方」京都府・向井酒造

東京でもコロナ感染者が連日2桁と減少傾向にある中、それに伴い週末を中心に人出が多くなってきました。
外出すればお酒を飲む機会も増えてきますね。
ということで、FOOD GROOVE JAPAN 通信vol.17は「日本酒」です。
お話しはFOOD GROOVE JAPAN 通信の日本酒担当と言えばこの方、小林舞依さんです。
小林舞依さんは、2018年より地元宮城県の「一ノ蔵」すず音(すずね)アンバサダーをしております。
vol.15では「ひやおろしって何?日本酒初心者でも安心、松みどりのススメ」をお話しいただきました。
今回は「寒い時期にはやっぱり熱燗!初心者でも安心“ぬる燗“の楽しみ方」です。

さてさて、どのような学びになりますか。
それでは、スタート!!

「寒い時期にはやっぱり熱燗!初心者でも安心“ぬる燗“の楽しみ方」

日本酒好きの小林舞依です。
今回で日本酒コラムは3投稿目となります。
前回の投稿では、神奈川県の「中沢酒造」様へ酒蔵見学に行った様子と、この秋に楽しめる「松みどり・純米吟醸ひやおろし」についてご紹介させていただきました。
このコラムでは日本全国にある1,400以上の酒蔵にバトンを渡す、酒蔵がおすすめする酒蔵のご紹介からできております。
今回お話をうかがったのは、京都府伊根町にある「向井酒造」様、14代目の向井崇仁(むかいたかひと)氏です。
向井氏と中沢酒造11代目の鍵和田氏は東京農大時代の同期で、同じ研究室に所属され学生生活最後の1年を共に過ごされたご友人。現在は同業種で切磋琢磨されているという熱い友情からのご紹介です。

■ 日本でいちばん海から近い蔵
向井酒造は丹波の地、伊根町で1754年(宝暦4年)創業260年の造り酒屋です。
丹後半島先端にある伊根町は、伊根湾を囲んで船屋が連なる舟屋の里。舟屋は船の収納庫の上に住居を備えたこの地区独特の伝統的建造物で、向井酒造も舟屋であり、海を渡って城下町の宮津市まで船で酒を運んでいたという歴史があります。
ブリの三大漁場であるこの地には大酒家の漁師が大勢おり、多くの酒蔵が出入りしていたのですが、その中でも向井酒造の酒が特に人気を博していたとのこと。漁業が盛んな土地だからこそ、向井酒造の食事に合う酒造りが人々の舌を喜ばせたのでしょうね。

■ 代表銘柄の「京の春」の看板を掲げた蔵は、町のシンボル
向井酒造の代表格といえば「京の春」。
その中でも「特別純米・ひやおろし」のラベルは大漁旗をモチーフにしており、この伊根町の発展を祈念されたデザインで、町のシンボルとなっています。
大漁旗は地方によっては福来旗(ふらいき)とも呼ばれるそうで、出産祝いや子どもの初節句に家に飾ることもある縁起物。ジャケ買いならぬ、ラベル買いをされるファンも多そうですね!
※「ひやおろし」についてはvol.15のコラムで取り上げましたので、併せてお読みください。

■ 化学肥料や農薬を使わない米づくり
「京の春・特別純米ひとやすみ」は素朴な風景画のラベルで、こちらもぐっと目を惹きます。
化学肥料や農薬を一切使わず、自然と向き合い自然と寄り添いながらできた、丹後産のお米コシヒカリでつくられた超限定酒です。
このコシヒカリをつくっている棚田はとても小さく、大きな農業機械は入れないため、米づくりの生産性としては決して良くない環境。土を掘っただけの水路の手直しや、獣害対策の柵の設置、棚田であるが故の急で大きな畔の草刈りなど手間がかかります。だからこそ、村人同士、助け合いながら働く豊かさを感じられます。お米の一粒一粒にみなぎる力を味わえる日本酒です。
せっかくの無添加米なので、製造でも乳酸添加をしない生酛仕込みでつくられています。
最近では健康志向が高まっている方が多く「オーガニック」「有機栽培」「自然栽培」「遺伝子組み換え(GMO)不使用」といった言葉を重視して商品を購入される方も増えてきています。
実は私もその一人で、数年前から摂取するアルコールや調味料など、口に入れるものはできるだけ健康や環境に良さそうなものを選ぶようにしています。
この点に関しては、個人や企業の考えがそれぞれあると思うので、個々の価値観で選べばいいと私は考えていますが、おいしく味わいながらも、こうした情報に触れられることの大切さを学ばせていただきました。

■ この時期おすすめの飲み方は、燗酒「ぬる燗」。
冷やして飲むのももちろん美味しい日本酒なのですが、食事と一緒に飲むことを考えると、「ぬる燗(ぬるかん)」がおすすめです。
燗酒(かんざけ・温めた日本酒のこと)の中でもぬる燗は、口当たりがやわらかく、米や麹のいい香りがする温度と言われています。日本酒を楽しむならやっぱりぬる燗。
居酒屋に行くと燗酒(かんざけ)のお酒は1種類しか選べないところが多い気がしますが、冷蔵庫のない時代は燗酒以外を冷や(ひや)と呼んでいたことからもわかるように、温かい飲み方が主流でした。
アルコールは、体温に近い温度で吸収されるため、冷たいお酒は体内に入ってから体温程度に温まるまでしばらくかかります。「酔ったな」と感じるまでに時間を要し、気付かないうちに短時間で飲みすぎてしまうことも。健康面でみても燗酒がおすすめです。
これからますます寒くなる季節、脂ののったブリやアンコウと一緒にうまい酒が飲みたい…、そんなときは、脂を固めてしまう冷酒よりも燗酒で楽しんでみてはいかがでしょう。おいしい食材をより一層楽しんでいただけるはずです!
上記でご紹介した「大漁旗ひやおろし」は少し熱めの55℃、「ひとやすみ」は45℃がおすすめ温度です!

■ 失敗しない、おいしい「ぬる燗」のつくり方
熱燗、ぬる燗など燗酒にはさまざまな呼び方があります。これは温度によって異なるのですが、詳しくは次回のコラムで触れたいと思います。
今回は、ほんのりあたたかい40℃ほどの、ぬる燗のつくり方を3つご紹介します。

1)湯煎でつくる方法
※日本酒のうまみを引き出すならこれ!
・お酒を徳利(とっくり)の9分目まで入れます。(このとき徳利の口にラップをするとこぼれづらく、香りも逃げにくいそうです)
・底が平な鍋に、徳利が半分ほど浸かるくらいの水を入れ、沸騰させます。
・沸騰する直前で火を止め、お湯の中に徳利を入れます。70℃くらいが目安です。
・2〜3分浸けたあと、お湯から取り出します。
・徳利の底を中指のはらで触ってみて、人肌くらいの温かさを感じたら飲み頃です。

2)お手軽!電気ポットでつくる方法
・お酒を徳利に入れます。(1同様)
・電気ポットに、徳利が半分ほど浸かるくらいの水を入れ、70℃に設定しお湯を沸かします。
・2〜3分浸けたあと、お湯から取り出します。

3)徳利がない!そのまま鍋でつくる方法
・鍋(ホーロー鍋がおすすめです)にお酒を直接入れます。
・そのまま加熱します。
・はじめは中火、フツフツとしてきたら弱火にします。
・耐熱性のおちょこなどに注いでお楽しみください。

■ 女性に人気!ホットワインのような楽しみ方も
現在向井酒造では、向井崇仁社長と向井久仁子杜氏の姉弟二人三脚で美味しく楽しい酒造りをされています。
杜氏の久仁子氏が開発されたという「伊根満開(いねまんかい)」も向井酒造の代表格。
ベリーのような甘酸っぱい風味、ロゼワインのような艶やかな見た目は、赤米という真っ赤な色をしたお米から作られています。60℃くらいに温めて、チーズと一緒に。おうちデートで、鍋パー
ティーで、寒くなってきたこれからにぴったりの飲み方ですね。

■ 酒蔵のバトン
このコラムでは、日本全国の酒蔵をつないで酒蔵がおすすめする酒蔵をご紹介してまいります。
向井酒造・向井社長からご紹介いただいたのは、埼玉県蓮田市にある神亀酒造株式会社の小川原貴夫(おがわはらたかお)社長。
神亀酒造で修行をし、その真髄を継承しながら酒造りに取り組んでいる向井社長は「通称・神亀チルドレン」と呼ばれているそう。
今年クラウドファンディングにて神亀酒造監修のもと販売された酒燗器「かんまかせ」は、13,000%を超える目標を達成。プロが認める本格的な熱燗を自宅で味わえる「かんまかせ」も注目です!

〈インタビューご協力〉
向井酒造株式会社 14代目 向井崇仁 様
京都府与謝郡伊根町平田67
http://kuramoto-mukai.jp/

[文 FGJ通信 日本酒コラム:小林舞依、 FGJ広報:大内]