趣味が高じてジビエの道に。「ジビエの可能性を伝えたい」自然豊かな和歌山県のジビエのお話を湯川さんにお話を伺いました。
紀州ジビエ生産販売企業組合 ひなたの杜
代表理事 湯川俊之(ゆかわとしゆき)
ジビエと聞くと、北海道や東北など寒い地域をイメージする方も多いと思いますが、今回お話を伺ったのは近畿地方の和歌山県田辺市でジビエの解体と販売を行なっている「ひなたの杜」の湯川さん。
湯川さんはジビエをさばかせたら「紀伊半島一の匠」と言われる職人。20歳年の離れた兄が猟をしており、小さい頃から慣れ親しんでいたと言います。好きなことが仕事になったら楽しそうと狩猟免許を取り、解体の道に進んだそうです。
湯川さんのジビエを味わったら、臭みのなさにジビエへの先入観が変わった人も多数です。完全天然もので、薬剤一切不使用、もちろんエサも天然。まだまだ知られていないジビエの魅力についてお話を伺いました。
◼️おいしくて使いやすい、本当のジビエ
田辺市は和歌山県で第2の都市であり、海側では黒潮の影響で比較的温暖の気候ですが、山側では雪も積もる地域だそうです。もともとは梅やみかんなどの果樹園に獣害が出ていたことから、この地域での猟がはじまったそうですが、当初は捕まえて殺しては土に埋めるしかなかったといいます。食用としていただくことで、地域も安全になり、捕まえる意味もできる、そんなジビエの奥深さを教えていただきました。
自然豊かな山野で育ったイノシシやシカたちは、ギュッと身が引き締まっており、噛むごとにじんわりと深い旨味が広がります。ジビエは硬い、臭い、と一般的には言われますが本来はにおいの少ないお肉。血抜きが不十分だったり時間が経っているとジビエ独特の臭みが出るそうですが、納得したものを仕入れて解体しているため、肉質もやわらかく旨味を感じられると言います。(私個人的にはくさみのあるお肉も大好きなのですが…)
湯川さんのおすすめは、塩コショウで焼くだけ。もちろん鍋や、煮込み料理など調理法によっても魅力が引き出されるのがジビエの面白いところ。冬の料理だけじゃない食べ方や旬についてもお話を伺いました。
◼️ジビエの旬は冬だけじゃない
ジビエといえば身がしっかりしていて硬いお肉というイメージから、鍋や煮込み料理などをイメージする方も多いようですが、それ以外の食べ方や旬も知らないことだらけでした。
12月半ばから5月頃にかけて旬になるのがイノシシのメス。1月から発情期に入ることでメスは栄養を蓄え、冬場は良質な脂が乗るのだそう。この頃のイノシシ肉は鍋に最適。寒い時期、温泉に浸った後にイノシシ鍋と日本酒なんて最高です。
シカは9月頃に発情期をむかえるそうで、5〜8月頃はオスに脂が乗ると言います。これは、シカが一夫多妻制という生態も関係しているようです。たくさん栄養を蓄えて大きく成長したオスはメスにモテる、そしてたくさん子を作れるということなのだそう。一方、メスは冬が旬。
オスとメスで旬が異なるというのは初耳でした。動物たちの生態を知ることで、自然の恵みと有り難みを一層感じられる気がします。
◼️職人技が光る
湯川さんは年間約600頭ものイノシシを捌く紀州一の匠で、一頭を捌くのに普通の職人さんの半分の時間(約30分)しかかかりません。そして鮮度命の考えのもと、捕獲から加工まで自らで行い最高に新鮮なまま出荷します。保存のための添加物を加える必要がないので、ぱさつきや雑味のないジビエ本来のおいしさをお届けすることができるそう。
◼️ひなたの杜にぜひ遊びに来てほしい!
湯川さんの処理場をオンラインで見学させていただきました。大きな窓ガラス越しに解体作業が見れるようになっています。2018年にできたばかりの処理場は、とても清潔感があり明るい環境でした。衛生管理のレベルの高さを含め、品質向上の取り組みに力を入れて取り組んでいるそうで、和歌山県独自の「和歌山ジビエ処理施設認証制度」で認証を受けている、衛生管理が徹底された施設です。狩場のほど近くにある衛生的な施設で迅速に加工できる点も、お肉を新鮮なまま出荷できる秘密なのだそう。
体験では、ジビエの骨を抜く工程や、皮を剥ぐ工程を実際に実践させていただけるそうです。
『意外と簡単なんですよ』と優しく話してくださいましたが、ちゃんと出来るか不安という気持ちと、命に向き合うという恐れのような気持ちが込み上げてきました。
スーパーに行けば魚は切り身になって売られていて、お肉はスライスされミンチになっている…。そんな日常から、命をいただいていることを学ぶ食育の場として、子どもだけでなく私たち大人も体験すべき場所のように感じました。
また、和歌山県は紀州梅や有田みかんも有名です。さまざまな食材とジビエを楽しむツアーをFGJでは考えています。
詳細はFGJのHPやSNSをチェックしてみてください!
取材協力:
紀州ジビエ生産販売企業組合 ひなたの杜
代表理事 湯川俊之 氏
取材:小林舞依