日本酒コラムVol.10 つながる縁を大切に「御慶事ふくまる」茨城県・青木酒造

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2022年8月30日
fgj@admin
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酒蔵インタビューVol.10 茨城県・青木酒造8代目 青木善延氏

SAKE STUDY:日本酒の“搾り(しぼり)”

日本酒コラム担当、日本酒好きの小林舞依です。

今回で日本酒コラムは10投稿目となります。

このコラムでは、日本全国にある1,400以上の酒蔵にバトンを渡す、酒蔵がおすすめする酒蔵のご紹介からできております。

今回お話をうかがったのは、茨城県古河市にある「青木酒造」8代目の青木善延(あおきよしのぶ)氏です。

ご紹介いただいたのは、長崎県南島原市の酒蔵「吉田屋」5代目、吉田嘉一郎氏。お二人は東京農業大学短期大学部時代の同期というご縁で、今でも一緒にお酒を飲みにいく仲。

「嘉一郎くんは短期大学を卒業後、茨城県の酒蔵へ入社されたので、酒造りの現場を知っているという意味では僕の先輩。切磋琢磨していける同期がいて嬉しいです。」と青木氏は話します。

プライベートでは、サボテンなどの塊根植物にはまっていて、ちょうど今の時期に手をかけています。

サボテンは5~9月に生育期を迎え、12~2月の冬の時期になると休眠期となるため、酒造りの繁忙期とかぶらず心地がいい。人にも酒にも植物にも優しい様子がうかがえます。

◼️つながる縁を大切にしていきたい

青木氏は、東京農大短期大学から編入し四年制へと進みます。酒蔵の長男として生まれ、物心ついたときから蔵を継ぐことを当たり前に感じていました。醸造を学ぶことももちろん重要ですが、大学でつながる同期やOB、先生方との縁を大切にしていきたいと話します。

短期大時代に1週間、四年制になってから2週間、カリキュラムの中で酒蔵への研修期間があります。短期大で行ったのは山形県の酒蔵、四年制で研修に行ったのは熊本県の酒蔵です。

酒造りに必要な大量の米を運んだり、洗ったり、主に人手が必要な部分に携わりました。

こうした現場研修を経て、重労働によって日本酒が造られていることを学生のうちに知ることができたこと、そして今でもこのときお世話になった先輩方との交流があるのはとても貴重で、有難いことだと青木氏は話します。

◼️青木酒造を支えた7.5代目、現専務取締役の存在

青木氏は3人姉弟の3番目。在学中に青木酒造を支えたのは、長女であり、現在専務取締役を務める青木知佐氏の存在でした。

看護士として働いたのちに「8代目は弟、私は7.5代目のつもり」として蔵を手伝うことを決意。

2018〜19年には、地元筑波大学の学生4名や一般参加者たちとチームをつくり、田植えから出荷までを行う「20代の取り組み〜二才の醸(にさいのかもし)」に挑戦し注目を浴びました。

◼️幸せという名の酒

青木酒造は天保2年(1831年)茨城県西部、渡良瀬川と利根川の交わる古河に創業。現在では古河唯一の地酒を造る酒屋として伝統を守っています。

清酒御慶事は3代目が大正天皇御成婚の折、皇室の繁栄と日本の国のますますの隆盛への願いを込めて「最高のよろこびごと」という意味で「御慶事(ごけいじ)」と命名。

※ 青木酒造HP参照

◼️幸せな酒造りにこだわる

更なる酒質の向上を目指した酒造りに転換したのは2013年。職人の高齢化などを懸念し、現・杜氏の箭内(やない)氏の就任や、酒造りに必要な設備も一新しました。

「笑いながら造った酒には、癒しがある。飲んで疲れないし、無条件においしい。飲んでいる人がやわらかい表情になる酒が造りたい」という箭内杜氏の想いと共に、新しい御慶事の歴史が始まりました。

そんな箭内杜氏がこだわった「御慶事・無圧シリーズ」は上槽(じょうそう)と呼ばれる搾りの段階で、圧力をかけずに自然に出てきた酒のみを瓶詰めした特別な日本酒。

6〜9月の各月で使う米も変えて造ったこだわりの4種です。

この無圧シリーズの売上の10%は同じ茨城県で火災に遭ってしまった結城酒造への義援金として寄付される予定です。

※ 箭内杜氏のお話は青木酒造HP参照

◼️日本酒は「搾り方」でも味が変わる?

日本酒は、米・米麹・水をもとに、酵母の力で発酵させた醪(こうじ)を搾ることで「酒」と「酒粕(さけかす)」に分けられます。

この搾り方にも酒蔵のこだわりが出てきます。

1.袋吊り、しずく搾り

タンクの上に木の棒を渡し、醪を詰めた袋を掛けます。そのまま圧を加えず重力で落ちてくる酒だけを取る方法です。人力で手間を惜しまず、最高のお酒を搾る方法とも言われています。

2.槽搾り(ふなしぼり)、槽がけ

槽(ふね)とは、長さ3mほどの船の形をした箱。その槽の中に、醪を入れた酒袋を何段も手作業で重ねて、上から圧力をかけて酒を搾り出す方法です。

2-1 撥ね木(はねぎ)式

全国でも6ヶ所でしか採用されていない方法。人力でゆっくり搾るため、まろやかでふくよかな味わいが特徴。

※ Vol.9 撥ね木搾りの酒蔵吉田屋参照

2-2 佐瀬式

佐瀬式吟醸搾り機を用います。最初は醪の自重で搾り、途中から上からゆっくり機械で圧力をかけて搾るものが佐瀬式槽搾りと呼ばれています。雑味のない口当たりのやさしい味わいが特徴。

2-3 八重垣式

八重垣式圧搾機を用います。槽の外で搾る、つまり酸化を促すようなつくりになっており、まろやかでありつつ個性的な味になるのが特徴。

3.圧搾搾り

薮田式自動圧搾機(通称:ヤブタ)を用います。槽搾りより強い圧力で搾れるため時短になり、より多くの酒が搾れます。空気にふれる時間が短いので安定した品質が保てる点と、フレッシュな味わいが特徴。

4.遠心分離

吟醸もろみ上槽システムを用います。醪は酒袋を使わず回転タンクに入れ、高速回転させて遠心力で酒と酒粕に分離させる仕組みです。シルクのような舌触りが特徴。

酒蔵では主にこの4種類のうち1〜2種類の方法を採用して酒造りをしています。酒選びや酒蔵見学の際にはこうした部分もチェックしてみると面白いですね。

◼️残暑を感じる「ひやおろし」の季節

「ひたち錦」と呼ばれる茨城県唯一の酒米を使った「御慶事・ひやおろし」はこの季節におすすめの一本。

冬に搾った酒を保存する際、劣化を防ぐため火入れ(ひいれ)と呼ばれる加熱処理を一度行ってから貯蔵します。夏の間貯蔵し熟成させた酒が「ひやおろし」です。

ひと夏かけてゆっくり貯蔵し育てることで、まろやかな甘みのあるホッとする味わいに仕上がりました。秋にしか味わえない限定の酒です。

残暑厳しいときには冷やして、涼しいときには常温でお召し上がりください。

◼️大きめのグラスでゆっくり味わう「ふくまる」

茨城県で生まれた大粒のお米、ふくまる。この食用米を100%使った純米吟醸「御慶事・ふくまる」が青木氏おすすめの1本です。

お米の一粒一粒が“ ふっくら・まあるい ” ことが米の名前の由来。

ふくよかな旨みと、後からほのかに香るフルーティーさが心地良い。程よい酸味が食事と合わせたときに、後味のキレを生んでくれています。さらに、今年の出来は過去一番と箭内杜氏のお墨付き!

しっかりと冷やし、あえて大きめのグラスに注いでちびちびと、温度の変化も感じながら味わうのも楽しいです。ごはんのお供に、甘辛く炊いた肉じゃがと一緒に飲むのがおすすめです。

このコラムでは、日本全国の酒蔵をつないで酒蔵がおすすめする酒蔵をご紹介してまいります。

次回、このバトンを受け取ってくださるのは…乞うご期待!

〈インタビューご協力〉

青木酒造株式会社

8代目 青木善延

〒306-0023 茨城県古河市本町2丁目15-11

取材:

FOOD GROOVE JAPAN

日本酒コラム担当 小林舞依

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