日本酒コラムVol.11 受け継がれる古酒の魅力「Handshake」千葉県・木戸泉酒造

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2022年9月29日
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酒蔵インタビューVol.11 千葉県・木戸泉酒造 蔵人 小薗江結氏、蔵元5代目 荘司勇人氏

SAKE STUDY 受け継がれる古酒の魅力

日本酒コラム担当、日本酒好きの小林舞依です。今回で日本酒コラムは11投稿目となります。このコラムでは、日本全国にある1,400以上の酒蔵にバトンを渡す、酒蔵がおすすめする酒蔵のご紹介からできております。

今回お話をうかがったのは、千葉県いすみ市にある「木戸泉酒造」蔵人の小薗江 結(おそのえ ゆう)氏と、5代目蔵元杜氏の荘司勇人(しょうじはやと)氏です。

小薗江氏をご紹介いただいたのは、茨城県古河市の「青木酒造」8代目、青木善延氏。

前々回掲載の吉田屋・吉田嘉一郎氏に続く、東京農業大学短期大学部時代の同期。そして青木氏からサボテンや塊根植物の魅力を伝えられ、今ではどハマりしているというほど、卒業後もとても仲のいい友人関係です。

◼️ずっと身近にあった日本酒

小薗江氏は茨城県の酒屋に生まれました。多くの酒蔵と繋がりのある父親の背中を見て育った小薗江氏ですが、年齢を重ねるうちに酒造りに興味を持ち、短期大学醸造科へ進学します。卒業後はご自身で求人情報を見て酒蔵を探しました。

同じ関東で酒蔵を探していたところ、目に飛び込んできた「高温山廃仕込み(こうおんやまはいじこみ)」。

学校では習ったことのない木戸泉酒造独自の製法に惹かれ、すぐに蔵の求人情報を探し電話をしたそうです。酒造りに対する熱い思いが伝わり意気投合、アットホームな雰囲気にも惹かれました。それから5年、蔵人として酒造りに携わり今では「蔵人O」としてSNSでの発信も任されています。

◼️添加物に頼らない、やさしい酒造りを

木戸泉酒造は、千葉県いすみ市にて明治12年(1879年)造り酒屋を始めました。屋号である「木戸」に酒をあわらす「泉」で「木戸泉」を銘柄としてきました。

昭和31年(1956年)、三代目蔵元の決断により、醸造法を「高温山廃酛(もと)」仕込みへと切り替えます。

高温山廃酛とは、一般的な仕込み方法である山廃酛(約5℃前後)や、速醸酛(約20℃前後)より高温の55℃の状態で発酵させる木戸泉酒造独自の手法。天然の生の乳酸菌を用いて高温で酒母を仕込むので、麹菌・乳酸菌・酵母菌の3つの菌がのびのび発酵する酒母造り手法です。

※Vol.8 生酛造りの違いについて参照

https://foodgroovejapan.com/?p=3394

この高温山廃仕込みをはじめた当時は、大量生産が必須の高度成長期。食品全般の防腐剤として使用されていたサリチル酸の危険性にいち早く気づき、防腐剤に頼らずとも長期間貯蔵できる酒造りに取り組んだのです。

(昭和36年にWHOよりサリチル酸を使用してはいけないという勧告が出され、数年経って昭和44年に清酒業界全体で使用しなくなりました)

「添加物や農薬、化学肥料を一切使用しない日本酒を造りたい」昭和42年には、添加物はもちろん原料となる米も農薬や化学肥料を一切使わない、自然農法米を100%使用した、自然醸造酒の製造も始めました。

◼️代をつなぐからこそ

高温山廃酛への切り替えから約10年、失敗を重ねながらも昭和40年に長期熟成酒の製造に成功。日本酒も古酒として熟成を重ねることができるようになりました。

昭和の時代、製造後1年を過ぎると等級も価格も落ちてしまう日本酒。古酒造りを念頭に醸造法の研究に賭けた木戸泉の覚悟、そして先駆者としての自負。

「蔵には、一番古いもので50年を超す古酒が今も熟成を重ねています。代をつないでいくからこそ楽しめるのも古酒の魅力ですね」と5代目 荘司氏が話してくれました。

◼️SAKE STUDY 受け継がれる古酒の魅力

古酒(こしゅ)と聞いて、どのようなお酒を思い浮かべるでしょうか?ワインのビンテージ物、年代物のウイスキー、中国の紹興酒、沖縄の泡盛古酒(くーす)などと同様、長期熟成酒と呼ばれるお酒は日本酒にもあります。今回は、古酒の定義や魅力についてお伝えします。

古酒の最大の魅力は、日本酒に含まれるアミノ酸、糖類、酸が分子レベルの化学反応を起こし、時間の経過とともに独特な色、香り、味わいを生み出す点にあります。

・色の変化 … 琥珀色やルビー色ともいえる色。

・香りの変化 …「熟成香(じゅくせいこう)」と呼ばれる香りはドライフルーツや熟した果実のようで、熟成年数が長くなるほど増していきます。

・味の変化 … とろりとした甘みのキャラメルのような味ともいわれます。ほどよい酸味と苦味を持っています。

熟成古酒が登場する最も古い文献は、鎌倉時代の手紙とされています。その後、江戸時代の各文献の中にも熟成酒が登場し、特別な日本酒として扱われていたことが伺えます。

しかし明治に入り、明治から昭和の戦時中、古酒は重い酒税「造石税」のためにいったん姿を消しました。

また、吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの「特定名称酒」のように、酒税法上の厳密な決まりはありませんのでラベルへの表示義務はありません。全国でも古酒として熟成管理している酒造会社は限られており、独自のルールや定義づけの中で長期熟成した酒を古酒と呼んでいます。このことから古酒の可能性はまだまだ広がりそうですね。

◼️大阪万博からヒントを得たグローバル化

木戸泉酒造の代表酒「AFS(アフス)」は、濃厚多酸酒という酸味が強く濃厚な味わいが特徴。

1970年の大阪万博で海外の文化やファッションを目の当たりにし、酒の多様化や海外進出を考慮して造られた酒でもあります。

白ワインのように冷やして、グラスに注いで味わうのがおすすめ。

しっかりしたコクとふくらみのあるボディ、乳酸由来の酸味が食欲をそそる食中酒です。また、開栓してから数日後の熟成と味の変化を楽しんでみるのもおすすめです。

◼️ブレンド古酒はフランクに楽しんで

9月2日に発売になったばかりの「Handshake」。握手という意味を持つこのブレンド古酒は、毎年好評のブレンド古酒シリーズ。

ラベルに印刷された握手の画は4代目(現会長)と5代目蔵元の親子の握手です。祖父から父子へと継承される酒造りへの想いを握手の写真に込めています。

1年以上熟成の純米酒をベースに、30年以上熟成の純米酒、5年超の熟成純米「アフス」をブレンドしています。琥珀色の酒色はグラス映え間違いなし。古酒ビギナーの方でもチャレンジしやすい180ml瓶もうれしい。

小薗江氏のおすすめは「意外かもしれませんが、乳酸菌飲料+炭酸水と合わせるのもおいしいんです。フランクに楽しんでほしい!」ぜひいろんな飲み方を楽しんでほしいと話します。

◼️秋はやっぱり「秋あがり」

千葉県いすみ市産の酒米「総の舞(ふさのまい)」を100%使用した純米酒。春先に搾った純米酒を一夏じっくり熟成させ、秋に出荷する秋あがり。

乳酸菌由来の豊かな酸味と、高温山廃仕込みゆえの深みとキレが秋の味覚をより一層引き立てます。常温から熱燗、熱々にして食事と一緒に楽しむのがおすすめ。

9月に発売になりオンラインショップではすでに売り切れ。ぜひ販売店でお求めください。

https://www.kidoizumi.jp/news/木戸泉-秋あがり-純米酒-販売店リスト/

いすみ市は全国トップクラスの伊勢海老水揚げ量。ちょっと贅沢に、伊勢海老と秋あがりの熱燗を楽しんでみてはいかがでしょうか?

◼️取材後記

今回は蔵人と蔵元のお2人からお話を聞く、日本酒コラムとしても初の取材となりました。

お2人ともウィンタースポーツが得意のようで、特に蔵元の荘司氏は南半球まで滑りに行った経験もあるとのこと。小薗江氏は現在サーフィンにも力を入れている様子。仲睦まじいお2人のお話はいつまでも聞いていたい楽しい時間でした。

このコラムでは、日本全国の酒蔵をつないで酒蔵がおすすめする酒蔵をご紹介してまいります。

次回、このバトンを受け取ってくださるのは、福島県郡山市の有限会社 仁井田本家です。次回も楽しみです!

〈インタビューご協力〉

木戸泉酒造株式会社

5代目蔵元 荘司勇人

蔵人 小薗江結

〒298-0004 千葉県いすみ市大原7635-1

https://www.kidoizumi.jp

取材:

FOOD GROOVE JAPAN

日本酒コラム担当 小林舞依

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