【コラム】きのこ王国、北信州中野 ラビット野口の旬食材探訪記

こんにちは、ラビット野口です。私は高級スーパーに勤務するかたわら、全国各地の生産者さんを訪ね、小売現場の視点から地産品の発掘や課題解決のサポートを行っています。そしてFOOD GROOVE JAPANでは、日本の食の魅力を発信する“食発見プロデューサー”として、素晴らしい生産者さんたちの現場の声をお届けしています。

今回は、「キノコ王国」とも称される長野県・北信州中野から、農業の現場と地元グルメをご紹介します!

北信州中野でつながる、人と食のご縁

訪れたのは、農業青年団体「ポプリ」の創設者であり、皇室献上米の生産農家でもあるこやなぎファームの新井康寛さん。以前から何度か現地で勉強や地域活性化の取り組みを拝見していましたが、昨年5月にはFOOD GROOVE JAPANのメンバーと一緒に現地を訪問しました。

 

季節料理 和喜多で味わう、地元の恵み

昼食に訪れたのは、信州中野の「季節料理 和喜多」。宮内庁御用本家・上又の調理師会理事である脇田大将による、旬の素材を活かした料理が楽しめる名店です。

ここでは、信州中野で採れた新鮮なキノコや野菜を中心に、大将が市場で直接買い付けた海鮮を使った料理、信州の地酒・地ビールなど、地域の味覚が存分に堪能できます。

なかでも印象的だったのが「エノキフラワー」。カリッと香ばしく、まさに“ご当地ならでは”の逸品でした。

丸世酒造の「もち米四段仕込み」

訪問した酒蔵「丸世酒造店」は、明治3年創業の老舗蔵元。初代・関申七郎さんが「世の中が丸くなりますように」と願いを込めて名付けたこの酒蔵では、他ではあまり見られない「もち米四段仕込み」による日本酒造りが行われています。

この製法は、通常の三段仕込みに加え、甘酒状にしたもち米を加える独自のスタイル。これにより、ふんわりとした優しい甘みと芳醇な味わいが生まれ、唯一無二の酒「勢政宗」が誕生しています。

苗床作業の現場から

高社山の麓では、雪解けと共に稲作がスタートします。訪れたこの日は、ちょうど苗床作業の真っ最中。水路から田んぼに水を引き込み、苗床トレーを浮かべて育苗していきます。これが終わると、いよいよ田植えの準備です。

地域のベテラン農家の方々と交わす何気ない会話も、次の世代に知恵をつなぐ大切なひとときとなっていました。

渡辺園芸の花づくり

次に訪れたのは、芍薬(しゃくやく)やトルコキキョウを育てている「渡辺園芸」さん。この地域では多くの農家さんが兼業農家として花や野菜を育てており、渡辺さんも冬は野菜栽培、春から夏にかけては花の出荷に取り組んでいます。

芍薬は「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と美人の代名詞にもなる花。母の日向けの出荷が終わると、来年に向けての手入れが始まります。

梱包はシンプルですが、生産者直送のため鮮度が良く、花が咲く過程や散る姿までをじっくり楽しめるのが魅力。色味は主にピンク系ですが、季節によって表情が異なり、毎年の変化を味わえます。

渡辺園芸公式サイト:https://www.watanabe-engei.jp

郷土の味と果樹園体験

お昼は蕎麦を中心に地元の食材を使用した郷土料理を提供している「郷土食堂(ごうどしょくどう)」で、春の山菜天ぷらと信州そば、郷土料理の笹寿司をいただきました。素朴ながら味わい深く、地元の食材の力を感じます。

また、地元のぶどう&りんご農家さんも訪問。ぶどうの摘果作業を少し体験させていただきました。

まとめ

「ポプリ」の精神は、「自分で作ったものは自分で売る」。農業と小売をつなぎ、マルシェ出店を通じて若手農家の育成や、地元の観光PRまで幅広く展開しています。こうした活動が、地域に根ざした持続可能な農業と食文化を支えていることを学びました。秋の収穫シーズンが今から楽しみです。