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【生産者通信】株式会社 米シスト庄内 専務取締役 佐藤優人様

【生産者通信】株式会社 米シスト庄内 専務取締役 佐藤優人様

自然溢れる山形県の庄内町で、お米一本で勝負をしている佐藤優人さん。楽器のベースのように目立たないながらも必ず何かを支え、生活の基礎となる米に面白味を感じ、11年に渡り米作りをしています。食の楽しみ方を伝え続けている佐藤さんに作り手の想いを語ってもらいました。

ー佐藤様のプロフィールをお伺いできますか?

山形県庄内町に生まれ、現在33歳。震災のタイミングで東京からUターンし、就農してから11年目となります。この町で生まれ育ち、現在はお米のみで勝負している農家です。

ー株式会社米シスト庄内の事業内容を教えてください。

お米に特化した農業生産法人で、平成10年に有限会社化をしました。平成6年、乾燥調整施設であるカントリーエレベーターを自社で建て、元々は共同利用組合として立ち上がったのが米シスト庄内でした。そこから直売先が増え、現在の形に至ります。

庄内平野は昔から米どころとして教科書にも載るような場所です。見渡す限りの広大な平野部でお米を作っています。現在米シスト庄内が集荷している田んぼ面積は約100町歩。これは東京ドーム27個分の面積にあたります。

ーなぜこの仕事をしようと思いましたか?

農業の面白さから話そうと思います。

百姓(農家を指す語)というのは、百の姓(かばね)と書くように、田んぼに立ってお米をつくるのはもちろん農業ですが、商品のパッケージ作りにイラストレーターを開くのも農業、スーツ着て営業行くのも農業、機械を直すのも農業と捉えています。そうやって色んなスキルが求められるのが農業の魅力であり、やりがいだと感じています。

休みの日にお米関係の人と会って、結果的に仕事の話をしていたり、遊びに行った先で友人からお米の注文を受けることも多いので、24時間仕事なのかプライベートなのか分からない事が多いです。それが最初は大変に感じていたんですが、結果的に自分自身の成長や経験、色んな人との出会いがそのまま仕事の成果に繋がっていきやすいので、それがこの仕事の魅力なのかなと感じています。

お米は生活の基礎

米シスト庄内の名前は、音楽におけるベース(BASS)から来ています。目立たないかもしれないけど全体を支える基礎(BASE)になっている。それは、お米そのものの在り方に繋がっていると考えています。

ご飯屋さんに行ったときに、お米そのものはあまりピックアップされないんですよね。どうしてもめちゃめちゃうまいトンカツとか、カキフライが有名でとか。なぜ今揚げ物2個言ったのか分からないですけど(笑)その中でただ当たり前にそこにあるものというのが、人の生活の基礎となりうる。「お米がうまい」という当たり前のインフラがそこにはある。そういうところにお米という農産物の面白さを感じています。

ー佐藤様が感じる業界の課題はありますか?

昔は東京に住んでる方も、親戚からお米を貰ってたり、実家が農家だったり、なんとなく農業の現場が身近だったと思うんですが、その親戚のおじさんももう歳だし農家やめちゃったとかで、地方と縁がある都会の人が少なくなっていってる感覚があります。田舎と都会の距離が広がりつつあるというか。

その中で、例えばコンビニのポテトサラダひとつとっても、必ずじゃがいも農家がその商品の裏側にはいて。そういうことに対する想像力が弱まってしまっている実感があります。同時に生産者側も、自分が作っている野菜を食べている人がどんな人かというのが見えづらくなってきていて。そういう農業の現場と食の場面が遠くなっていく時代に僕は強い危機感を持っています。もっとその距離が近くなればなるほど食べ物の味は必ず美味しくなると信じているので、そこが課題というか、何とかしないといけないところだなと思っています。

ーその為に取り組まれていることはありますか?

FGJの取り組みもそうですね。色んな出会いの中で多くの想像力が生まれる瞬間を、関わるそれぞれの人が持てればいいなと思います。

日本各地に知り合いをつくったり、好きな生産者やメーカー、あそこの作るせんべいは最高だとか、何でもいいんですけど、そういうのがあるとスーパーで買い物する時でも、その売り場の見え方が変わってきますし、普段の情報の取り方が変わる気がするんですよね。そういった取り組みを農家ながらに発信出来たらいいなと思います。

ー消費者の方に伝えたいことを教えてください。

これは難しくて、お米って何が違うねん。って話なんですよ。コーヒー豆を売るのと似ていると思っています。それぞれの産地や品種で特徴があるんだけど、全体的には似ていて。本当は他との違いをアピールするべきなんですけど、それもなかなか難しい。でも、10年やって辿り着いた考えがあって、お米は生産者と近ければ近いほど美味しくなる魔法の食材だということです。

お米に対する距離の近さ=お茶碗の美味しさ

色んな農家さんと日々会っていると、日本中の米農家が「うちの米が日本で一番美味い」と言うんですね。最初はそれを苦笑いで見ていたんですけど、それもまぁ当然かもなって最近は思います。春から秋まで、めちゃめちゃ暑い日も雨の日も毎日田んぼに行ってトラブルに対応したりしながら、半年間毎日向き合い続けたお米が、その人にとって一番美味くない訳ないよなって思うようになりました。

だからお米は、お米に対する距離感が、そのままお茶碗の美味しさに乗っかってくるんだと思っています。

スーパーで安いからって買うお米と、雑誌の米特集を見て買ったお米は「米に興味を持った」という行動分、きちんと美味しさに乗っかってきます。どういう過程で10月の新米が生まれているのかを見てもらった上で食べるお米は、それが同じものであっても全然違う味がする。というのがお米の面白さだと思いますし、食の面白さだと思います。

なのでどうぞ地方に、色んな産地に、興味を持ってみてください。そうすればするほど美味しいと感じる瞬間が増えてきます。そんな食の楽しみ方をして貰えたらいいな。というのが伝えたい事ですね。

ーFGJ会員の方が庄内に行ったら、どんなことが楽しめますか?

田植え機、トラクター、コンバインに乗れます。裸足で田んぼに入って田植え体験や稲刈りもできます。そういう米作りの現場をお届けできますね。

庄内はいいところなので、山、川、海、湖、砂丘もあって、全部車で30分圏内に集中してるんです。なので山登り、最上川の船下り、海水浴、スキーなど色んなアクティビティを楽しめますね。色々紹介できるので、何でも言ってください!

あと、山形は中華そばの消費量日本一なんです。信じられないくらいラーメン屋さんがあります。朝5時からやってるラーメン屋さんもあって、トビウオだしを使ったりしているんですね。白湯みたいな感覚で朝からいただくあっさりラーメン、非常にうまいです。もちろん、お魚も野菜も牛も豚も鳥もあって、食べるものには困らない町だと思います。

ー米作りの時期はいつ頃ですか?

田んぼでの作業は3/20から、田植えは5/10頃、収穫が大体10月くらいです。大体田起こしを入れると7か月くらいですね。そういうのも体験して頂けます。トラクターやコンバインは、田んぼの中では免許要らないんですよ!誰でも乗れます。

ー視聴された方へメッセージをお願いします。

以前から田んぼの現場と食の場面が近くなる事を凄くイメージして活動をしてました。これをきっかけに色んな人に出会えて、色んな学びを沢山の消費者の方から頂けることを楽しみにしています。ぜひご興味をもって遊びに来て頂けたらと思います。宜しくお願い致します。

【アクセス】
〒999-7766 山形県東田川郡庄内町久田字寺前8
・飛行機
最寄り:庄内空港
羽田空港→庄内空港(1時間)→車で20分
10名まで送迎可能。
・電車
最寄り:余目駅
1,東京→山形新幹線 新庄駅(3時間半)→陸羽西線 余目駅(40分)
2,東京→上越新幹線 新潟駅(2時間)→特急いなほ 余目駅(2時間)
【インタビューご協力】
株式会社米シスト庄内(べいしすとしょうない)
専務取締役 佐藤 優人氏
〒999-7766 山形県東田川郡庄内町久田字寺前8
TEL / 0234-42-1181
FAX 0234-45-0338
URL / http://beisist.co.jp
取材:磯部麻美