2026年10月17日・18日の2日間、「由利本荘市×FOOD GROOVE JAPAN 食と農の体験プロジェクト2026〜お米をつくって、心も整えよう〜」のメインイベントである稲刈りツアーを開催いたしました。
秋田県由利本荘市の澄んだ空気と豊かな土壌、そして地域の方々の温かい真心に包まれた2日間の模様を、現地での体験と感動を交えてお届けします。
一束の稲に宿る一手間。生産者が教えてくれた「一番おいしい食べ方」
秋田の地に到着した参加者をまず迎えてくれたのは、あつあつの「きりたんぽ」と具だくさんのお味噌汁。移動の疲れをじんわりとほぐす温かいおもてなしとともに、ツアーは和やかにスタートしました。

昼食とオリエンテーションを終え、一行に向かったのは「アグリプロ黒沢」さんの田んぼです。
青空の下、鎌の正しい持ち方や刃の向き、刈り取った稲の美しい束ね方まで、生産者さんから一つひとつ手ほどきを受けながら稲刈りに挑戦。実際に手を動かしてみることで、普段私たちが何気なく口にしているお米一粒一粒に、どれほど多くの手間と時間がかけられているかを身をもって実感する時間となりました。

「お米はどう食べるのが一番おいしいですか?」
作業の合間、参加者からの問いかけに生産者さんが笑顔で返した答えは、実にシンプルなものでした。
「塩むすびが、一番おいしい」
丹精込めて育て上げたお米だからこそ、余計なものを足さず、塩だけで味わう。その言葉の奥には、自らが育てた作物への深い愛着と誇りが満ちていました。
そして今回は特別に収穫したお米(稲)を天日で干す「稲架掛け(はさかけ)」(または、はぜ掛け、稲木干しなど)を体験させて頂きました。
現在では機械(コンバイン)で刈り取りと同時に脱穀・人工熱風乾燥を行うのが主流のため、このような景色が見られることはなくなってしまいました。
収穫した稲を束ね、木や竹で組んだ横木(稲架)に逆さまに吊るして、太陽の光と心地よい風でじっくりと自然乾燥させる日本の伝統的な乾燥方法のことです 。地域によっては「はぜ掛け」「ほぜ掛け」「稲木(いなぎ)干し」などとも呼ばれます。
- 旨味が熟成されて美味しくなる
- 稲を逆さまに吊るすことで、茎や葉に残っている栄養分や旨味(アミノ酸や糖分)が、重力によってじわじわと根元からお米の粒へと落ちて集まると言われています。
- お米が傷みにくく、風味が長持ちする
- 機械による急激な熱風乾燥に比べ、太陽光と自然の風で10日〜2週間ほどかけて「ゆっくり」乾燥させるため、お米の粒がひび割れ(胴割れ)しにくく、新米ならではのみずみずしい香りと粘りが長く保たれます。
- 長期保存ができるようになる
- 収穫したばかりの稲は水分が20〜25%ほどあり、そのまま放置するとすぐにカビが生えてしまいます。天日干しで水分量を14.5%〜15%程度まで落とすことで、虫やカビを防ぎ、長期保存が可能になります。


「これうめんだ〜」の言葉に滲む、地元食文化への誇りと情熱
田んぼで汗を流した後は温泉で体を癒やし、夜は地域の皆さまとの懇親会が催されました。
夕食に登場したお米は、口に入れた瞬間に広がる甘みと香りに、思わず言葉を失うほどのおいしさ。「本当に美味しいものを口にしたとき、人は言葉よりも先に心が動く」——そんな感動が会場全体を包み込みました。
さらに参加者を驚かせたのは、地元の皆さまが「これうめんだ〜」と笑顔で勧めてくださる郷土の味覚の数々です。
- カニ酒: 芳醇なカニの殻に熱燗を注ぎ、豊かな出汁とお酒の旨みを一体となって楽しむ極上の杯。
- もだち: 秋田の豊かな山々が育む、地域特有の風味豊かなきのこ、ナラタケ。
- 百竈(ひゃくかまど): 秋田県内でも限られた場所でしか手に入らない希少な地酒。
東京では限られた料理人が特別なひと皿として提供するような贅沢な食材が、ここでは日々の食卓の「当たり前」として息づいています。「これを知らないなんて勿体ない!」と目を輝かせながら語りかけてくださる姿から、自らの土地の食文化に対する揺るぎない誇りと愛着がひしひしと伝わってきました。

走る車窓に鳥海山を望み、実りの秋を全身で楽しむ2日目
2日目の朝は、由利高原鉄道の名物列車「おばこ号」への乗車から始まりました。
車窓から見渡すのは、収穫を終えたばかりの黄金色の田園風景と、その奥に雄大にそびえ立つ鳥海山。美しい景観に心を洗われた後、一行は新山神社へと参拝し、実りへの感謝を込めて稲穂を奉納いたしました。

続いて訪れたのは、「秋田ニューバイオファーム」さんの畑です。ここでは、さつまいも(紅はるか)の収穫体験を行いました。
「紅はるかという品種は、収穫してから1か月ほど置くことで甘みがぐっと増すんですよ」という生産者さんの教えに、参加者からは一斉に驚きの声が上がります。
「みんなで力を合わせて掘り出したからこそ、このお芋がどんな味になるのか食べてみたい」
自分の手で土に触れ、作物を収穫する体験。それが「知りたい」「味わいたい」という深い興味と感動へ直結していく——食体験が持つ本質的な力をあらためて実感する瞬間となりました。

産地の「当たり前」を、東京の食卓と未来へつなぐ
今回の2日間のツアーを通して強く実感したのは、産地には私たちがまだ知らない「当たり前のおいしさ」と、それを支える人々の深い温もりが満ちあふれているということです。
FOOD GROOVE JAPANはこれからも、地域で土を耕す生産者の皆さまと、都市部の飲食店や生活者の皆さまを結ぶ架け橋として、食を通じた豊かな体験とつながりを創出してまいります。
心温まるおもてなしで迎えてくださった由利本荘市の皆さま、大切な田んぼや畑を開放してくださった生産者の皆さま、そして素晴らしい時間をともに過ごしてくださった地域の皆さまに、心より感謝申し上げます。


